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<スピンオフ> 第1章 安西航 19

last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-23 21:28:09

「ここに茜と『南大輔』って男がいるのか……」

航はファミレスの看板を見上げると呟いた。先ほど茜からかかってきた電話で、自分の住むマンションからほど近いファミレスにいるから来て欲しいと言われたのだ。

「さて、行くか」

航はファミレスの入り口をくぐった。

「茜の奴……一体どこにいるんだ?」

店内は広々としており、なかなかの盛況ぶりであった。その為、航は茜の姿を見つけることがなかなか出来ずにいた。するとその時……。

「航君! こっち、こっち!」

航の背後で茜の声が聞こえてきた。振り向くと茜は座席から立ち上り、少し恥ずかしそうに手招きしている。背広を着た相手の男性は航に背を向ける形で座っている為にここからではその表情を見ることが出来なかった。

「ああ! 今行く!」

航は返事をすると、茜のいる席へ向かうと当然の如く隣の席に座り、正面の席に座る男性を見た。

(へえ~この男が茜の彼氏か。何だか俺の想像よりも斜め上をいっているタイプだな……)

航の想像していた『南大輔』という男は、サラリーマンで年上と聞いていたので、琢磨や修也のようなタイプの男かと思っていたのだが、目の前に座る『南大輔』はそのどちらにも当てはまらなかった。ヘアスタイルは後ろを短く借り上げており、額を見せたワイルド・ツーブロックに眼鏡をかけた人物だった。

(随分生真面目そうな男だな……社長令嬢に惚れられたって聞いていたから琢磨のようにチャラチャラしたタイプの男だと思っていた)

航は自分のことを差し置いて、勝手に琢磨のを持ち出して目の前の南大輔と比較していた。けれど別に琢磨はチャラチャラしたタイプの男では無かった。ただ、人目を惹く外見で妙に女性たちから一方的に好意を寄せられていた人物だった為に航が勝手にイメージしていただけなのである。

一方の南は航があまりにもぶしつけにジロジロと自分を見るので、正直気分は良くなかった。その為、つい険しい目で航を見ている。

「あ、あの……航君。この人が……その……」

茜はそんな雰囲気の悪い2人の空気を察し、紹介しようとしたところ、南が口を挟んだ。

「よろしく、俺は『南大輔』だ」

そして腕組みをすると、航を値踏みするようにじろりと見た。

「俺は安西航だ。よろしく」

何をどうよろしくするのかは分からないが、2人の男は視線を交わした。

南は航を一瞥すると言った。

「ひょっとして君はフリーター
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